自家焙煎珈琲 しゃらん   ◆ホームページ  


853号 2017年4月30日

(1)自家焙煎珈琲 しゃらん

  

 光の森で自家焙煎珈琲屋を営んでいる舩元と申します。私の知識で、皆さんに美味しく珈琲を飲んでいただきたい・・・との思いで書きました。

「コーヒー発見伝説」

 コーヒーの発見についてですが、発見伝説はいくつもあります。今回はエチオピア説をお話ししましょう。

 ある日、放し飼いにしていたヤギたちが、夜になっても元気に飛び回っている姿にヤギ飼いのカルディが驚いた。その様子を観察していると、ヤギたちがみな「赤い木の実」を食べているのに気付いた。そこでカルディ少年も勇気を振り絞って試しにその実を口にした。するとどうだ、全身に活力がみなぎってきたではないか。この赤い木の実をみつけた少年こそが、カルディ。この「赤い木の実」こそがまさしくコーヒー豆だった。 
 これに驚いたカルディは、修道士のもとに駆けつけ奇跡を告げた。カルディの話を聞いた修道士は、その実があれば、夜の長い祈りを襲う睡魔にも打ち勝つことができるのではないかと考え、その実を口にした。後に、修道士たちの修行の“秘薬”として使われ、世界に広まっていったという話である。

 「カルディ」? 皆さんもどこかで聞いたことがありませんか(笑)

  「ブラジル」

 甘味、すこやかな酸味、まろやかな口あたりが特徴です。飲み易いコーヒーです。お店では、日系人トミオ・フクダ氏の農園の生豆を焙煎してます。

自家焙煎珈琲 しゃらん
菊陽町光の森7丁目17−5
電話096−202−6793


856号 2017年5月28日

(2)コーヒーの日本での伝わり方

 日本で最初にコーヒーを口にしたのは、織田信長であるとか、豊臣秀吉であるといった説もあります。
 記録に残っているのは、江戸時代末期、長崎出島で当時の貿易に関係した人が飲み始めたのが最初という説が、より一般的だそうです。そして、その出島に持ち込まれたヨーロッパの医学書の中に、コーヒーの効用が書かれていたということです。ここで、コーヒーの歴史を年表にしてみましょう。

◆1609年(慶長14年)
 平戸に和欄商館が開設され、コーヒーが伝えられたと言われている。
◆1804年(文化1年)
 日本人として初めてコーヒーを飲んだ体験を太田蜀山人(しょくさんじん)がコーヒーは焦げ臭くて味わうにたえないと書いた。
◆1826年(文政9年)
 医師シーボルトが、コーヒーは長寿をもたらす良薬であると「薬品応手録」でコーヒーを勧めた。
◆1858年(安政5年)
 自由貿易が開始され、コーヒーも正式に輸入されるようになった。
◆1930年(昭和5年)
 東京のカフェは7000軒にものぼり、女給と呼ばれる人たちが働いていた
◆1936年(昭和11年)
 日本に初めてブルーマウンテンコーヒーがロンドン経由で輸入された
◆1961年(昭和36年)
 インスタントコーヒーの輸入が全面自由化になった
◆1983年(昭和58年)
 10月1日をコーヒーの日とし、キャンペーンが開始された

 現在の日本のコーヒーの消費量は世界第3位で、輸入量も30万tを超えています。今では、コーヒーは誰でも楽しめる、国民的飲料となっています。


           「グアテマラ」

 クリーンな喉ごしで後味スッキリ。甘さも感じられ、深煎りでチョコレートの風味があるコーヒーです。
生豆名:SHBスティゴールド

 


860号 2017年6月25日

(3)珈琲の神様、関口一郎」

 東京・銀座の「カフェ・ド・ランブル」オーナー関口一郎さんは、大正3年生まれの103歳の焙煎職人である。
 私と関口さんとの出会いは、7年前の96歳になられる頃。年齢も国籍も着ている服も異なる人々は「カフェ・ド・ランブル」の珈琲を飲むという目的意識において一致している。それぞれのテンションで珈琲と向き合っている。おいしさの狙いどころも方法論も刻々と変わる珈琲業界の中で、「カフェ・ド・ランブル」は常に、ランブル・イズ・ランブル。どの群れに交わることなく、淡々と珈琲だけの店であることを続けた。独自の道を歩いてきた。言ってみれば異端者だ。今カウンターに立つことはない。けれどちゃんと店にいて、焙煎室の隣にある半畳ほどの書斎に座っている。今でも、たまに豆を焙いているという。
 珈琲との出会いは、彼が十代の頃、浅草住まいの家族とミルクホールへ食事に行った時のこと。もっと飲んでみたいと飲み歩き、すきっと抜けるようなきれいな味に魅了されたそう。ランブルとは、アンバー(琥珀)という意味。理想地点を目標に戦前から検証を重ねて、挽き方、抽出方法を探り、たどり着いた答えがネル・ドリップだった。ネルとは、厚手の綿布を縫い合わせたフイルター。豆を焙く焙煎機、砕いて粉にするミル、ポット、ネル、コーヒーカップに至るまですべてオリジナル。不満や欠点を一つずつ潰しては検証し、良い方を選択するというやり方で決まっていった。人の情報はうのみにしない。経験して覚え、経験して発見し…。その繰り返しで自分のメソッドを作り上げようとする。「紙一重の向上心」と彼は表現する。紙一枚分しかない薄さ、その地道な積み重ねにより、答えが見えてくると、神様は言う。
 彼の言葉「今、みんな知識はものすごくあるけれど、でも珈琲を目や耳で飲んでいるのですね。自分の舌で飲んでいない」信じられるのは自分の舌、つまり経験だけであるという。珈琲屋を続けていて良かったこととは?「お客さんと対話ができて、喜ぶ顔が目の前で見られる。喜ぶ声が聞ける。それが毎日続くこと」人生を賭ける仕事の動機!!
参考文献:井川直子書 昭和の店に惹かれる理由

 人の嗜好はそれぞれ違います。自分の舌で感じた珈琲に巡り合えた時、人は、大きな喜びを感じて幸せな気分になると思います。私も、至福な一杯の珈琲を追い求めて、経験を重ね、もっと、お客様の喜ぶ顔や、喜ぶ声を聞きたい。珈琲の神様に少しでも近づけるよう、焙煎を続けたいと思います。

  「マンデリン」

 生豆は独特の深緑色で粒が大きく、焙煎すると、まろやかさを併せ持った他に類を見ないコクがあります。


865号 2017年7月30日

(4)コーヒーと健康

 今回はコーヒーと健康について考えてみることにしました。緑茶を1日に5杯飲む女性は、ほとんど飲まない女性に比べ、胃がんのリスクが約3割低いことが示されています。男性でも緑茶を飲む頻度が高いほど、進行した前立腺がんのリスクは低下することが分かっています。

 コーヒーはお茶以上にがんの予防に有効のようです。肝臓、大腸、すい臓、子宮体がんといった、緑茶が効果を示さないがんを予防する可能性があります。たとえば男性の場合、コーヒーを1日3杯飲む人は、すい臓がんにかかるリスクが4割も下がるというデータがあります。肝臓がんの場合、コーヒーを毎日飲む人は、男女ともリスクが約半分に減少。特に、1日の摂取量が増える人ほどがんの発生率が低下し、1日5杯飲む人では、肝臓がんの発生率は4分の1にまで低下していました。肝臓がんの9割以上は、B型かC型のウイルス性肝炎が原因で発症します。コーヒーには炎症をやわらげる作用があり、肝炎の進行を抑えることで、肝臓がんを予防するのではないかと考えられます。また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸などの「抗酸化物質」が、肝臓の細胞のがん化を防いでくれる、との報告もあります。

 コーヒーはすい臓、大腸、子宮体がんなど、そして糖尿病や肥満、運動不足がリスク要因となるがんなどを予防することが分かっています。コーヒーを飲むと、運動したのと同様に糖の消費が進みます。このため、体内で血糖値を下げるホルモンの「インスリン」を分泌する必要がなくなります。一方、インスリンは糖尿病や運動不足が原因となるがんを増殖させる傾向がありますので、コーヒーはがんと糖尿病の双方の予防に役立つことになります。
 厚生労働省の研究班のまとめでも、コーヒーは、肝臓がんを「ほぼ確実に」予防し、大腸がんを予防する「可能性あり」と位置づけられています。コーヒーの有効性は次第に定説になりつつあるようです。(参考:東京大学病院准教授 中川恵一)

 私も仕事柄、がんの予防の目的ではありませんが、毎日、各種類のコーヒーを飲み比べてより美味しいコーヒーを提供していきたいと、毎日3杯は飲んで日々精進しております。ただ、胃酸の分泌を促す作用などもありますので、飲みすぎには注意しましょう。その上、バランスを考えた食生活と適度な運動をいかに取り入れていくかということも大切なことです。コーヒーは脂肪を燃焼させる効果もあると言われています。その効果もあるのか、現在ピーク時の体重から12s減少し、現在キープ中です。次回の人間ドックでどう数値が変化したか、乞うご期待です。

   「モカ」

 エチオピア シダモG−1 グジ ウオッシュド

 伝統的なエチオピアのエキゾチックフレーバーとブラウンシュガーのような甘さがあります。


868号 2017年8月27日

(5)美味しいコーヒーを淹れるコツと手順

 ペーパードリップでコーヒーを淹れる方法をお伝えします。まず、豆の選択は、焙煎後のできるだけ新鮮な豆を選びます。使用量に応じて少量ずつ小刻みに購入することをお勧めします。コーヒー豆の量は一人前130tの場合、12g〜15gくらいで使うと良いでしょう。ドリッパーが円錐型か台形型かによってフィルターを選択して下さい。サーバーについては、メモリー付きが便利です。お湯を注ぐポットは、湯ができるだけ垂直に落ち、注ぎ口が細いほうが湯量の調整がしやすく望ましいです。

 具体的にコーヒーを淹れる手順を説明します。
ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、粉を入れ、平らにならす。(一杯12g、130ccでコーヒーを淹れる)
沸騰したお湯をポットに移す⇒サーバーとコーヒーカップにお湯を入れ、温めておく。(お湯の温度88度〜92度が適温)
 1投目、中心に細かく静かに注いだ後、約20秒程蒸らす。「蒸らし」の時に、コーヒーが膨らむのは、コーヒーに含まれるガスが放出されるため。ガスを出すことで、コーヒーとお湯がなじみやすくなり、お湯の通り道ができる。つまり「蒸らし」はコーヒーの美味しい成分を充分に引き出すための大切な工程。
 2投目、中心から外側へ「の」の字を書くように投入。必ず真上から中心にお湯を注ぐ。(フィルターの壁面の側からぐるっとお湯をかけると、粉を滑らせ、空気が外へ逃げづらくなる要因となり、粉にまんべんなく浸透しない)
 3投目、2投目の後、中心がくぼみそうなタイミングで投入。
 4投目、濃度調整、投入のお湯は太目に。サーバーの目盛130ccで完了。
※最後まで抽出すると、コーヒーの雑味(美味しくない余分な成分)が落ちてくる。投入後のカスのチェック、細かな泡はコーヒーのアク、雑味のもとになる成分。
 表面に細かな泡が残っていれば、雑味の無いクリアな味になっている。

  「コロンビア」

 スプレモ・ルイス・ボルカーノ
 コロンビア特有の甘味と程よい酸味、バランスの取れたコーヒー。

 


872号 2017年9月24日

(6)「コーヒーベルト」珈琲の木の産地について

 朝晩は、めっきり涼しくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 珈琲の美味しい季節ですね。10月1日は珈琲の日です。そこで、今回は珈琲が栽培されている世界の地域を紹介します。熱帯地域でのみの栽培です。緯度上では、南北それぞれ23.26度の南回帰線と北回帰線の間をいいます。
 この地域は、珈琲産地が集中しているため「コーヒーベルト」と呼ばれています。しかし、熱帯だからといって、どこでも収穫できるわけではありません。栽培に適した土地は、気温、降雨量、土壌、病害虫などにより制約があります。珈琲は農作物ですから、香味は地域、気象条件、土壌、品種、精製方法などにより大きく変化します。また、毎年微妙に香味は異なります。大まかには、高地の寒暖の差で実が締まり、明るい酸味としっかりしたコクがあるものが良質とされています。生産国により、珈琲の香味はかなり違ってきます。代表的なものを紹介します。

●ブラジル
 世界最大の生産国で、その収穫量が世界の珈琲の価格に影響します。生産地域、品種、精製方法で香味は大きく異なります。

●エチオピア
 アラビカ種の原産地で栽培環境はよく、個性的な香味の珈琲を生みだします。小農家により栽培され、果実感のある香味が特徴です。代表的なものがモカです。

●インドネシア
 スマトラ島のアラビカ種がマンデリンと呼ばれています。スラウェシ島、バリ島、ジャワ島でも栽培されています。

●グアテマラ
 産地により、香味の多様性があります。アンティグア地方は標高が高く、酸味とコクがあり、良質の珈琲を生み出します。

●コロンビア
 品種が混在し、生産地域により香味がかなり異なります。

 

 皆さんも、いろんな種類の珈琲を飲んで、自分の好みの味を見つけて下さいね。
 ※「菊陽まち遊び2017」が、10月から始まります。自家焙煎珈琲しゃらんも昨年に続いて参加します。お楽しみに!!


876号 2017年10月22日

(7)ドリップのしかたもう一度!!

先日、来店された30代の女性のお話しです。カウンターで私の淹れたコーヒーを飲まれていて、何やらお話をされたい様子。会話を楽しんでいると、「おいしいペーパードリップコーヒーを淹れることができない」とのこと。それで、ぜひ自分の日頃使用している珈琲器具一式持参で、来店して下さいと伝えると、びっくりして「本当にいいんですか? 絶対来ます」と言って帰られました。
 数日後、ドリッパー、サーバー、ペーパーフィルター、珈琲粉、手動ミル等一式持ってご来店。テーブル席でコーヒーをいつものように淹れていただきました。最初、お湯をフィルター内の珈琲粉の周りにぐるりと注がれました。そこですぐ間違いを指摘させてもらいました。
 お湯を珈琲粉の周りに注ぐと粉ごとドリッパーから滑り落ち、雑味ある珈琲になってしまいます。珈琲粉の真ん中にお湯を少々注いで20秒ほど待つと、珈琲の粉が膨れ、お湯と粉がなじんできます。これが「蒸らし」というお湯を注ぐ行為であることを説明しました。それから、お湯を3回ほど分けて注いで出来上がり。最後の一滴は雑味が出るので、ドリッパーは取り外すことも付け加えました。以上のことを確認していただき、改めてコーヒーを淹れてもらいました。再度挑戦したコーヒーを、本人と私、それとカウンター席のご夫婦で試飲してみました。全員一致した答えが返ってきました。「おいしい!! まろやか!!」女性の喜んだ顔と笑い声が店内に広がりました。

そこで、ドリップコーヒーの淹れ方をもう一度確認してみたいと思います。

 

●1投目
 ドリッパーの中心に細かく静かにお湯を注ぐ(湯量はサーバーに数滴落ちる程度。20秒程蒸らす。おいしい成分を引き出す重要な工程)

●2投目
 中心から外側へ「の」の字を書くように投入(お湯を真上から注ぐ、フィルターの壁面からだと粉を滑らせる要因となる)

●3投目
  2投目のあと、中心がくぼみそうなタイミングで投入

●4投目
  濃度調整、投入のお湯は多めに(注意点として、最後の一滴まで抽出すると、雑味が落ちてきますので、その前に取り外して下さい)

 

*コーヒーの淹れ方など分からないことがありましたら、いつでもお尋ね下さい。お待ちしています。


881号 2017年11月26日

(8)ミャンマーのコーヒー豆について

 先日、高校時代の友人がミャンマーに関係する仕事に従事しており、ミャンマー産コーヒー生豆をお土産に持ってきてくれました。
 ミャンマー連邦共和国は東南アジアのインドシナ半島西部にある国で、バングラデシュとラオスの間に位置し、南北に伸びる長い国土が特徴です。国土面積は日本の約1.8倍で、気候は国土の大半が熱帯または亜熱帯ですが、気温や降水量は地域によって差異が大きいようです。
  早速、焙煎。豆の特徴を確認したいと思い、やや浅煎りで試してみました。飲んだ第一印象“いける”。モカとコロンビアをミックスしたような口当りで、ほんのりとした甘味が感じられ、スーッと入っていきました。

 
 ミャンマーの豆は私の中では、全然飲めるコーヒーではないという先入観がありました。かつてのミャンマー産の豆は品質が極端に悪く、到底世界で通用するような豆ではありませんでした。そこで調べてみると、ミャンマーコーヒー協会によると、コーヒーの木の栽培面積は約4エーカー(約16,000ヘクタール)。年間生産は2万から2万5千トン。ちなみに、コーヒーの木は1エーカーあたり約1,000本ほど植えられるそうです。主に国の北部高地で栽培されており、肥沃な赤土と適度な降水量、それが高品質な豆へと育つカギとなっているようです。数年ほど前からコーヒー産業が急激に上昇しており2016年にアトランタで行われたSCAAエキスポにおいて良い成績を得たおかげで今や世界で注目を浴びる生産国となったそうです。何気ない味わいでありながら、しっかりとした印象を与えてくれる新しいタイプの豆でした。

 味の感じ方は、飲んだ人、煎り具合、豆の鮮度によって変化します。コーヒー豆は、本当に奥が深いと思います。今まで味わったことのない産地の豆に出会い、感動し、また出会っていない産地の豆を求めてみたいとの思いになりました。最近では、ミャンマー旅行のお土産に珈琲豆も人気があるようです。


885号 2017年12月24日

(9)世界一の生産量を誇るコーヒー大国“ブラジル”

 ブラジルは、コーヒーの消費量がアメリカに次ぐ世界第2位です。さまざまな品種を栽培するブラジルでは、高品質なコーヒーを生産する技術を常に追求し続けています。18世紀半ばに栽培が本格化、セラード地区が代表産地で、機械化が進んだ大規模農園が多く、灌漑(かんがい)設備も整っています。
 ブラジルで最も普及している精製方法は伝統的な“ナチュラル”で、ブラジルコーヒーの90%になります。ナチュラルとは、非水洗処理方法で、収穫したコーヒーチェリ―をそのまま乾燥し、その後に脱穀、中から生豆を取り出す精製のことです。ナチュラルに比べ、未熟豆の混入がかなり減るのが“パルプトナチュラル”です。この精製方法は、そのまま乾燥させずに果肉を取り除いてから乾燥させます。中規模農園などの一部がナチュラルからこの方法に切り替え、効果的に品質を向上させている状況です。まず水の浮力を利用してコーヒー豆を比重選別します。浮くチェリーは未熟なので、果肉を付けたまま乾燥させる工程にまわし、沈んだものは果肉除去の工程に送る並列的な処理を行っています。未熟豆はコーヒー独特の渋みがでるので、収穫後に実の比重選別をすることで、品質向上の効果を生んでいるところです。
 栽培については、5〜8月ぐらいまでがコーヒーの収穫期です。大規模で起伏の少ない農園は機械収穫が普及していますが、最終的には人手で収穫を行います。枝から実を葉っぱごと一気にしごき落とす“ストリッピング”という方法で、熟した実だけ摘み取る方式ではないため、収穫時には未熟豆が混入してしまうこともあります。
 最も高い評価を受ける農園の一つとして、ノッサ・ニョーラ・ド・カルモ農園があります。栽培地の最高点の標高は1300mに達し、ブラジルでは高地に位置します。高地産ならではの明るい酸味が出ています。パルプトナチュラル精製ならでのボディ、甘みも感じられる香味が豊かなスペシャルティコーヒーが作られるようになりました。


889号 2018年1月28日

(10)コーヒーフィルターペーパー

 コーヒーフィルターペーパーには、色、形、質等の特徴があります。その中で、「CAFEC」のコーヒーフィルターペーパーには、目詰まりをさせない両面クレープ(しわ)加工が施してあります。それはコーヒーの粒子(微粉を含む)を両面凹凸部分にきれいに付着させ、お湯を最初から最後まで目詰まりさせることなく抽出するためです。これはペーパードップにおいて、最も重要なことです。ペーパードリップにおいてお湯をためるということは、ドリップする人が調整することが出来なくなり、味のブレが生じることにつながり、抽出オーバーになります。たかがコーヒーフィルターペーパーではありますが、以下CAFECの特徴をまとめました。

 

〈特 徴〉
@厚さ:一般的に厚さは、抽出したい量に比例しますが、厚みが高く、厚手感があります。その理由は、紙を製造する際、湿紙の状態でクレープを形成させ、紙をつぶさないように乾燥及び仕上げを行うため、両面クレープができます。

Aろ過速度:早い速度となり、透過法における最良のコーヒー抽出が可能となります。そのメカニズムは、@での製造方法と密接な関係により生み出され、厚みとコーヒー量の関係で紙の密度が低いため、透過法における点で目詰まりせず、安定した抽出速度が保てます。

B熱水臭気:臭気判定士が気検査を実施しているため、無臭です。

C熱水溶出:臭気等の製品の安全性や、森林認証を取れる原材料を使用するなど、製品に対する安全、環境など付帯する側面においても、配慮された製品を供給しているという特徴があります。


893号 2018年2月25日

(11)コーヒーともっと仲良しになれる豆知識を紹介します

◆「缶コーヒーを作ったのはどこの国?
 UCCの創業者、上島忠雄氏が駅でコーヒー牛乳を飲んでいると、予想外に電車が早く来てしまった。当時は瓶を店に返さなければいけないので、泣く泣く飲み残したまま返却。それが残念で、「手軽にいつでも飲めるコーヒーが欲しい」と思った上島氏は、試行錯誤を重ねて、1969年に「UCCコーヒー ミルク入り」を完成させました。
 その翌年、大阪の日本万国博覧会で人気が爆発。現在まで続く缶コーヒーの歴史が始まったのでした。1972年には、ポッカ創業者の谷田氏も缶コーヒーの製造を開始。1973年には、世界初のホットとアイスを兼用できる自動販売機を完成させました。ということで、答えは「日本」。

◆幻のコーヒー豆、“コピ・ルアク”って?
 インドネシアのコーヒー農園では、熟した果実がジャコウネコに食べられてしまうことがあります。しかし、栄養として消化されるのは果肉だけで、種子は消化されずに排出されます。この種子を拾い集めて洗浄、焙煎した豆がコピ・ルアクです。稀少なのでとても高価。
 コピ・ルアクとは、ジャコウネコの糞から採られる未消化のコーヒー豆のことで、「コピ」はコーヒーを指すインドネシア語、「ルアク」はマレージャコウネコの現地での呼び名です。コピ・ルアクの起源はインドネシアで、フィリピンや南インドでは、この豆をカぺ・アラミドといいます。ジャコウネコは、独特の香りを持つ分泌物を出すことで知られており、このコピ・ルアクも独特の強い香りが特徴。この香りは、腸内で消化酸素や、発酵によって生まれるようです。
映画の「かもめ食堂」では、男性が小林聡美演じる主人公に、「コーヒーがおいしくなるおまじない。コピ・ルアック」と教えるシーンが物語のキーとして登場します。皆さん、一度お試しに飲んでみられませんか。


897号 2018年3月25日

(12)コーヒーの木に見られる鮮やかな色の変化

 手塩にかけたかいがあり、小さかったコーヒーの苗木はすくすくと育ち、緑の葉を茂らせて太陽に向かって伸びていきます。そして3年ほどたったころ、真っ白い花が一斉に咲き誇ります。ジャスミンの香りに似ているといわれるその芳香と、か細い可憐な姿は人々を笑顔にしてくれます。一斉に開花することが多いため、まるで農園一帯に降るはずのない雪が積もったようで、この季節のこの風景を「スノーブラッサム」とも称されています。そんな熱帯の雪景色は長くは続きません。
 花は3日、短いものは1日でしおれてしまい、あとには緑色の楕円形をした実がひょっこりと顔を出します。やがて実の色は緑から黄になり、成熟とともに燃えるような赤へと変化していきます。この成熟した実がサクランボに似ていることから、コーヒーチェリ―と呼ばれるようになりました。このコーヒーの実の色の変化を「生」で見たいとひそかに思っているところです。

 

生産国民はコーヒーを飲んでいる?
 精製された生豆は丁寧に選別され、欠点豆を取り除いた最高級の豆だけが外へと輸出されます。生産した豆の約40%を自国で消費するエチオピアのような国もありますが「海外に輸出したほうがもうかる」と、生産者はあまりコーヒーを飲まなかったり、輸出するよりもグレードの落ちるコーヒーを飲んでいたりもします。フェアトレードが行われるなどして、生産者、労働者の権利は守られるようになってきましたが、生産国の経済を支えるためには、仕方のないことなのだろうと思います。しかし、切ないお話だと思います。
 自分で育てたコーヒーを飲めないのは、とても悲しすぎますね。耕作する人たちへ感謝の気持ちを込めて、毎日コーヒーを飲みたいと思います。


901号 2018年4月22日

(13)栽培品種「ゲイシャ」

 数多く出回るコーヒー豆の中で、世界最高峰のコーヒー豆が「ゲイシャ」と言えます。エチオピア南部にある「ゲシャ」という地域で生まれた品種です。この「ゲシャ」がなまって、「ゲイシャ」という呼び名になりました。
 当初、ゲイシャは収穫量も少なくて魅力のない品種として人気がありませんでした。そういうことで、世界から一度見放された品種でありましたが、パナマのエスメラルダ農園が品評会に出品したのがゲイシャ種であったと言われています。2004年に再発見されたと記録されています。
 香りはジャスミンに例えられて、紅茶のような味覚であったといわれ、コーヒー業界にあっという間に広がり、コーヒー通の舌に衝撃が走りました。
 ゲイシャが全世界に認知され、高品質のコーヒーとして歩み始め、“スペシャルティコーヒー”の生産を確立していきました。個性豊かな香りと風味、味覚を提供できるコーヒー豆として進化していきます。その後の各品評会でも、「エスメラルダゲイシャ」として、強烈な個性を発揮し、2007年には、1s約3万円という価格で、世界最高落札価格を達成しました。
 しかし、すべてのゲイシャが美味しいのか? 気候と栽培技術がいかに確かなものであるかが決め手となります。ゲイシャ豆の購入時は、品質重視を見極めることが大切だと思います。
 皆さん、ゲイシャに興味を持ってみませんか。コーヒー好きな人への高価なプレゼントでもよろしいし、個性的な風味であなたのコーヒーの世界を変えてくれるかもしれません。


905号 2018年5月27日

(14)老舗「イノダコーヒ」での楽しみについて

 フォークシンガーの高田 渡氏が「コーヒーブルース」という曲のなかで歌った「イノダコーヒ」 は、京都府 三条境町に本店がある老舗。カフェのオープンは1947年です。
 コーヒーを頼むと、「砂糖とミルクをお入れしてよろしいでしょうか?」と聞かれます。砂糖は入れられていますが、混ぜられていません。さらに角砂糖も付いてきます。つまり、かきまぜ具合で好みの甘さに調節できるということです。イノダコーヒのコーヒーは、ブラックにしないことで一番コーヒーの味が引き出されるように感じられます。甘くマイルドになってなお、コーヒー本来の味が楽しめます。
 また、この本店のモーニングの時間は常連が多いのも特徴で、挨拶を交わして新聞を読む顔馴染みの客に混ざって、“しっとり”とコーヒータイムを楽しむのも一興です。定番のホットコーヒーは「アラビアの真珠」という名前で、東京にも支店があります。
 皆さん、コーヒーの飲み方は十人十色です。このさわやかな季節に自分だけの至福の一杯を探し求めてはいかがでしょうか。

◆通はブラック・・・?

 コーヒーは嗜好品なので、特に「ブラックコーヒーを飲む人が通である」という決まりはありません。そもそも、「砂糖を入れないのがブラック」と考えるのは日本人のみの傾向です。もともとはミルクやクリームを入れないものがブラックで、加糖、無糖は問われませんでした。ただし、コーヒーそのものの香りや味を感じるためには、まずひとくち目は熱いうちに何も加えずに飲んでみるのもいかがでしょうか。新しい味覚の発見があるかもしれません。


909号 2018年6月24日

(15)コーヒーの実の収穫方法のメリット、デメリット

 コーヒーの木は、ひとつの木や枝になる実の熟すスピードが異なるという特徴があります。ひとつの枝だけを見ても、ある豆は赤かったり、ある豆は青かったり…。真っ赤に熟した実だけを選びながら、未熟な青い実を混ぜないよう手作業で収穫する方法が、品質のよいコーヒーにするためには望ましいです。

◆A
 完熟果実を一粒ずつ摘む方法です。未成熟果実、および異物の混入率が低いですが、作業コストが高いです。

◆B
 地面に直接しごき落とす方法です。作業コストが安いですが、未成熟果実、異物の混入率が高く、また、細菌によるダメージを受けるリスクが大きいです。
◆C
 布を敷いてしごき落とす方法です。作業コストが比較的安いですが、未成熟〜過熟果実が混入します。細菌によるダメージのリスクは軽減できますが、異物の混入率が高いです。

◆D
 機械による方法です。手作業に比べて、作業コストが安いです。未成熟〜過熟果実が混入するので(しごき落とす方法よりは少ない)、初期コストが高いですが、平地でしか使えません。

 

コーヒー豆は食べられるの?

 焙煎したてのコーヒー豆なら、ポリポリとかじると香ばしく、おいしいと感じる人もいます。カフェインやクロロゲン酸は抽出したコーヒーよりも少しだけ多いですが、たいして変わりません(2割増し程度)。ただし、焙煎したての豆はコーヒーよりも刺激が強いので、普段からコーヒーを飲み慣れない方や、子どもに与えるのは避けるべきでしょう。おいしいと思っても、少量で我慢しておくのがいいかもしれません。


913号 2018年7月22日

(16)インスタントコーヒーの発明者は日本人!?

 第二次大戦後、一般庶民へのコーヒー普及に大きく貢献したインスタントコーヒー。実はこれは1899年に日本人の加藤博士が発明したものだという説があります。コーヒーを液化してから水分を除去して粉末にしたものを作ったのですが、日本には発表する場も販売する道もなかったのです。
 博士はアメリカに渡り、1901年に「ソリュブル(可溶性)コーヒー」としてパンアメリカン博覧会で発表。話題となりましたが、特許を取っておらず、1903年にジョージ・ワシントンという人物が特許を取得してしまい、インスタントコーヒーの発明者となりました。
 博士は、名前ですら「サトル」「サトリ」「サルトリ」と諸説あり、まさに謎を秘めた幻の発明者となってしまいました。博士は実業家ではないので、特許をとって商売に生かすという発想はなかったのです。しかし、研究者としての地位を確立した人として、称賛したいと思います。

 

コーヒーお菓子の先駆けといえば!

 1971年に明治製菓から発表された「コーヒービート」は、多くの人に衝撃を与えました。
 “チョコとコーヒー、2つの味が1つになった”というキャッチコピーも、「ビート」というネーミングもコーヒー豆の形に成形された粒も、すべてがカッコよかったです。コーヒーを飲ませてもらえない子どもにとっては、「ちょっと大人の気分になれる自慢のチョコレートだった」と、特に50代の大人は懐かしがっていらっしゃるのではないでしょうか?
 現在でも、コーヒーとチョコはケーキ以上に相性が良いのではないかと思います。暑い夏こそアイスではなく、ホットコーヒーを飲んで、チョコ食べて、ちょこっと、ほっとしてみる時間も大切じゃないでしょうか?(笑)


917号 2018年8月26日

(17)読書に最適なカフェがある

 ブックカフェを皆さまご存じですか?ブックカフェとは、本を読みながらコーヒーが楽しめるカフェのことです。本は持参してもいいのですが、カフェの売りは、さまざまな本が並べてあることです。漫画あり、アート系の雑誌あり、絵本あり、絶版になってしまった希少書ありと、各店ごとに個性豊かな蔵書が置いてあります。美味しいコーヒーを飲みながら、読みたかったあの本を読破する…。
 ブックカフェは、コーヒーと本を愛する人々のオアシスとも言えるのではないでしょうか。ちょっと空いた時間を自分なりに読書に没頭してみるのもいいですね!!

音楽になったコーヒ

 1673年、コーヒーの愛好家だった音楽家、バッハが発表したのは、コーヒーをやめられない娘と、父や家族全員の騒動を歌った風刺たっぷりの楽曲「コーヒー・カウンター」。初めて演奏したのはドイツのライプツィヒのカフェだったと伝えられています。
 そして、時代は20世紀、1975年にはボブ・ディランの「コーヒーもう一杯」がヒット。同一名の漫画のタイトルにもなりました。また1961年、日本では西田佐知子が歌う「コーヒー・ルンバ」が大ヒット。その後も多くの人がカバーするスタンダードナンバーになりました。  
 コーヒーは読書、また、音楽にとっても身近な素晴らしい飲み物と言えます。


921号 2018年9月23日

(18)ジャズ喫茶今昔物語

 1950年代、輸入盤のジャズのレコードが高価だった時代に誕生し、現在もその形態を変えずに残っているジャズ喫茶。ジャズを聴くことを目的としたサロンで、音質にうるさいジャズファンが「弦をこする指の音」までを堪能しに来る店もあります。
 ただし、60年代には音楽を聴くバーのような形態も現れ、いまでいうライブハウスのようなところもできてきました。主にGSのバンドが演奏しており、その時代のことは沢田研二の「ACB(アシベ)」という曲でも歌われています。ACBは新宿と銀座にあったライブハウスタイプの代表的なジャズ喫茶でした。

コーヒーの日っていつ?

 国際協定で決められた10月1日がコーヒーの日。これは、ブラジルの収穫が9月でほぼ終わり、10月から新年度に入ることから決められました。社団法人全日本コーヒー協会でも、1983年からこの日を新しい年度初めとしました。秋は、温かいコーヒーが恋しくなる季節なので、この日は、日本人にとってもぴったりくるのではないかと思います。

◇ さて、ここで問題です。コーヒー豆の鮮度を保つには、2つのポイントがあります。湿気のある場所に置かないことと、もうひとつは?

【答え】酸素に触れさせないことです。自宅での保管方法をもう一度確認してもらい、とても厳しい暑さが続いた季節とおさらばして、ゆっくりと自分好みの美味しいコーヒーを味わってみましょう!!


926号 2018年10月28日

(19)最強のインスタントコーヒーを入れてみる

 誰にでも手軽に入れられて、すぐに飲めるのがインスタントコーヒーのいいところ。でも、インスタントだったら、どう入れたって味に違いはないでしょう? と思うなかれ。基本のルールを守らなければ「これはまずいインスタントコーヒーなのだ」と思い違いをしてしまうこともあると思います。

 基本ルール
水道水を一度沸騰させ、火からおろして温度を下げます。
一般的にはティースプーン山盛り(約2g)にお湯140mlが適量です。
お湯は95℃が理想で、湯温が下がりすぎないように注意し、注いだらかき混ぜて溶かします。
高温時にクリームを入れると、コーヒーと結合して固まってしまいます。
ラベルをしっかり見て、原産国や製造を確認しましょう。
 とにかく、自分の好みに合ったものを選ぶことが最優先であります。

 1杯のコーヒーのカロリーは?
 成分はいろいろ入っていますが、ほとんど水分なのでエネルギーとしては少ないです。無糖ブラックコーヒーで約4kcal、ちなみに緑茶は約2kcal、紅茶は1kcal程度。ただし、砂糖やミルクを入れると、もちろんカロリーはアップします。なんでも入れすぎには注意して、おいしく飲むことが大切です。


930号 2018年11月25日

(20)コーヒーノキの栽培に適した環境は?

 コーヒーノキはアカネ科の常緑樹で、平均気温が20度以上という熱帯・亜熱帯の温暖な気候に加え、安定した降水量がある地域が栽培に適しているといわれています。
 農園は標高900〜1500mの高原に広がっていて、その地域によってコーヒーの味わいは変わってきます。種をまいて40〜60日後に発芽しますが、そこからコーヒー豆が収穫できるようになるまでには約5年ほどかかります。寒さ、霜、乾燥に弱いデリケートな木なのです。
 もともとコーヒーノキは、直射日光に強くないので、周りにバナナなどの背の高い木があるところで栽培されてきました。
 コーヒーノキに日陰を作るためにシェードツリーといわれる、土壌の水分をあまり必要としないマメ科の高木樹を植える農場もあるほどです。さらに近年ではサスティナビリティ(持続可能性)のある、レインフォレストアライアンス認証、バードフレンドリー認証など、コーヒー豆が社会的・環境的ガイドラインを守って栽培されることが第一に考えられています。

コーヒーチェリ―の中は?
 収穫したコーヒーチェリーは、まだ実の状態です。コーヒー豆といわれているのは、この実の中にある種子のことです。通常、実の中に種子が二つあります。収穫したら、次にこの実から種子を取り出す「精製」という作業をしなければいけません。これには水洗式と自然乾燥式、半水洗式の3種類の方法があり、そうして取り出した種子は生豆(なままめ、きまめ)と言います。ちなみにこの生豆の状態では香りはありません。
 香りがでるのは焙煎以降で、焙煎の出来不出来が大きく香りと味を左右します。まず、お買い求めになるのならば、新鮮な焙煎豆がベストではないでしょうか?


934号 2018年12月23日

(21)オーガニックコーヒーって何?

 農薬や化学肥料を使わない、無農薬有機栽培されたコーヒーのことです。コーヒー産業では、トレーサビリティ(追跡可能性)やサスティナビリティ(持続可能性)が常識になっています。さらに体に良いこと、生産者にとって良いことを考えたオーガニックコーヒーやフェアトレードを選んでいるコーヒー店も増え、人気を集めています。 
 オーガニックに関しては、有機JAS認証を取得しているお店も出来ているので、探してみると面白いかもしれません。

表面に脂が浮いているように見える豆は古いのか?

 必ずしも古い豆とは言えません。焙煎をすると豆は膨張して少しだけ割れます。この時、もともと含まれていた油脂分が表面に浮き出てきて、テカテカと脂が付着した状態になります。これは深煎りすればするほど起きやすくなります。つまりテカっている豆は焙煎度合が深いと思っていいと言えます。ただ、保存状態があまり良くないと、そうとも限りませんので、注意してください。
ともかく、美味しい豆は鮮度の良いものを選択した方が好ましいと言えます。


938号 2019年1月27日

(22)コーヒーと病気の疫学

 「真っ黒焦げのコーヒーなど飲んでいるとがんになるに違いない」と予測した研究者たちが、恐る恐る疫学研究を始め、想定外の研究成果が出ました。
 コーヒーを飲んでいると、がんになりにくいだけでなく、肝臓病や糖尿病などの生活習慣病にもなりにくいというのです。
 今世紀になるまで、そんなデータは誰も信じてくれませんでした。ようやく疑いが晴れたのは、世界中で出てきたデータを全部まとめて見直した“メタ解析”(複数の研究結果を統合し、分析すること)の結論が出てきたからです。
 コーヒーを1日4杯から5杯飲む人は二型糖尿病(中高年、太り気味の人に多い。食べ過ぎが原因で発症する)になるリスクが58%まで下がることが確認されました。そして、発がんリスクも25%まで下がることも、世界中の論文を集めて再検証しても確かなことが判明しました。
 健康診断で尿酸値が高いと言われた方が、コーヒーを飲んでいると低い値を示すデータが検出されました。ただし、食生活の改善と適度な運動が必要と言われています。また、パーキンソン病(脳内のドーパミンが不足して運動機能障害がでる病気)にも効果があるといわれるカフェインは、それ以外にも、焙煎の浅煎りと深煎りした成分ブレンドコーヒーが効いているという実験データもあります。

 最後に、脳卒中や心臓病は、降圧薬や抗血栓薬で予防する医療の他に、1日に3、4杯のコーヒーはリスクを下げるというメタ解析論文も出ています。ただし、コーヒーをたくさん飲めば病気知らずということではないようです。飲みすぎはかえって逆効果になることをご確認願います。
 結論として、健康管理は適度なコーヒーの摂取と食生活の改善及び適度な運動に尽きることではないかと考えます。


942号 2019年2月24日

(23)コーヒーベルトから外れた日本産コーヒー豆が!?@

 明治時代、日本でもコーヒー栽培に取り組んだ時期がありました。東京都小笠原諸島に6種類の苗を移植しました。しかしそれのどれもが失敗に終わってしまい、その後栽培計画は立ち上げられませんでした。 
 しかし現在、本格的に栽培から焙煎までを行い、カフェを併設している農園が沖縄に存在します。100%国産コーヒー豆で、しかも完全有機栽培です。
 場所は本島北部の東村(ひがしそん)。カフェでは、コーヒーの新芽とレモングラスを合わせた珍しいお茶を飲むことができます。現在の年間収穫量は約1tですが、徐々に増やしていくということです。 
 沖縄の風に吹かれて、沖縄産のコーヒーを飲みながらくつろげるなんて、こんなぜいたくは味わえないかもしれません!?
 次に、温室で栽培されているコーヒーの木を見学して、そこで採れた豆でいれる一杯を味わえます。長崎県大村市寿古町(すこまち)の長崎スコーコーヒーパークは、南米に移り住んでコーヒー農家になりたかった中島さん(76歳)が、40年あまりにわたって築いてきました。
 中島さんは熊本県小山戸島村(現熊本市東区)生まれ。米国で食堂を営んでいた祖父母を持ち、米メーカー「ヒルス」のコーヒーを3歳から飲んでいました。家中に毎朝晩、鉄瓶を沸かして入れるコーヒーの香りが満ちていたそうです。
 次回は続きをもっと詳しく掲載します。
どうぞ、お楽しみに!!


946号 2019年3月24日

(24)コーヒーベルトから外れた日本産コーヒー豆が!?A

 前回に続き、長崎スコーコーヒーパークの中島さんについて、もっと詳しく紹介してみたいと思います。
 中島さんは、コーヒー農園で働くのが夢でした。故郷で畑仕事をしていた17歳の時、ブラジルへ移住しようと思いましたが、途中で頓挫しました。日本のコーヒー発祥地が長崎と知り、26歳で大村市に喫茶店を開きました。コーヒー栽培を始めたのは1974年ごろで、国内では、沖縄と小笠原諸島で露地栽培の例があるだけでした。教えてくれる人も本もない。適した温度、水のやり方、苗の増やし方、実のならせ方…。ひとつひとつを実地で解明していきました。
 約300坪の温室で、農薬を使わずに栽培するアラビカ種・約200本から、年に100s弱の生豆を収穫します。コーヒーパークのレストランでハンドドリップで入れるのは、キャリア50年の妻・恵美子さん(69)です。ブレンドもあります。団体客には、ご主人がソンブレロとポンチョの姿で浪曲を披露してくれます。レストランのコーヒーで炊飯したピラフは、マンガ「クッキングパパ」にも登場しました。
 温室では深緑の葉に交じり、黄緑の若葉が出始め、4〜6月には、赤柴に実が熟します。中島さんいわく、「コーヒーは気楽に飲むもの」と言いながら、マイカップに砂糖を入れながら笑顔で話をしていました。「コーヒーの香りと味わいに勝るものは、この世にない」という印象が強く感じられました。


951号 2019年4月28日

(25)コーヒー、主産国で消費急増

 世界的に需要拡大が続くコーヒー。消費量は日米欧3地域で約5割を占めますが、シェアは低下傾向にあります。 対照的に消費が急増しているのが、人口増と経済成長が続く東南アジアや中南米の主産国です。
 ベトナムやインドネシアは5年で5割増の勢いで、輸出に回していた高品位のコーヒーを自国で消費する傾向も目立ってきています。  
 米農務省によると、2018〜2019年度の日米欧の合計消費量は、8086万1千袋(1袋は60s)と過去5年で10%増える見通しです。このうち日本は6%増。しかし、世界に占める日米欧シェアは51%から49%に低下します。  
 一方、主要9生産国(ブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、フィリピン、エチオピア、インド、中国、メキシコ)の合計消費量は4863万5000袋と5年で25%増え、シェアは27%から30%に伸びる見通しです。ベトナムの消費は299万袋と49%増えます。  
 ベトナムは世界2位の生産国で、主にインスタントコーヒーなどに使う比較的安価なロブスタ腫を生産しています。だがロブスタ腫だけでなく、中南米などが産地のアラビカ種を楽しむ消費者が増加し、外資系のカフェが、流行に敏感な若者でにぎわいをみせています。  
 世界4位の生産国、インドネシアの消費量も5年で53%増となっています。現地に自社農園を持つキーコーヒーによると、「ロブスタ腫がメインの屋台だけでなくアラビカ種をメインとするコーヒー店が増えている」ということです。内需拡大を映し、同国の輸出量は5年で約2割減る見通しになりそうです。
(3月1日付 日本経済新聞より引用)


954号 2019年5月26日

(26)コーヒーの効能ってなんだろう?

 コーヒーの成分としてよく知られているカフェインやクロロゲン酸などは、利尿効果や胃酸分泌促進、血液の流れを良くしたり、脳神経細胞を活性化する効果があります。さらに眠気を取り除き、頭をスッキリさせてくれます。受験勉強や仕事が集中しているときなどには、効果的な飲み物といえます。
 ただしコーヒーが脂肪燃焼を活性化させるからと、過度なダイエット効果を期待したり、「高血圧にも低血圧にも効く」という曖昧な効能を過信してはいけません。なによりコーヒーという飲み物は、嗜好品として、自分なりにおいしく楽しく飲むことが一番だと思います。さらに、付け加えて申し上げれば、コーヒーをよりおいしく飲むためには、豆で購入し、自宅でミルを挽いて香りも楽しんで飲んでみるのがベストではないでしょうか。

そもそもカフェインって何?

 カフェインは窒素を含む天然の有機化合物で、苦み成分のあるコーヒーの重要な成分のひとつです。この成分はカカオや茶葉などにも含まれています。興奮、覚醒、利尿、胃酸分泌などの作用があり、医薬品などにも使われています。
 コーヒー豆に含まれるカフェインは、わずかに中毒性はありますが、それは相当な量を摂取した場合であって、常識的な量のコーヒーを飲む程度では中毒にはなりません。一般的には、1日5杯程度のコーヒーでしたら問題ないとされています。
 コーヒーに限らず、アルコールやジュース、お茶など、何でも飲みすぎは体によくないといわれています。ご注意ください。


958号 2019年6月23日

(27)コーヒー栽培は周りの木を減らさない!?

 もともと「コ−ヒーノキ」は直射日光に強くないので、周りにバナナなどの背が高い木がある所で栽培されてきました。コーヒーノキに日陰を作るためにシェードツリーといわれる土壌の水分をあまり必要としないマメ科の高木樹を植える農場もあるほどです。
 さらに、近年ではサスティナビリティ(持続可能性)やレインフォレストアライアンス認証、バードフレンドリー認証など、コーヒー豆が社会的・環境的ガイドラインを守って栽培することが第一に考えられるようになってきました。コーヒー栽培は、環境面でも大いに社会貢献していることを確認しておきたいものです。

コーヒーノキの栽培に適した環境って?

 コーヒーノキはアカネ科の常緑樹で、平均気温が20度以上という熱帯・亜熱帯の温暖な気候に加え、安定した降水量がある地域が栽培に適していると言われています。
 栽培さてきます。種を蒔いてから40〜60日後に発芽しますが、そこからコーヒー豆が収穫できるようになるまでには、約5年ほどの年月がかかります。コーヒーノキは寒さ、霜、乾燥に弱いデリケートな木なのです。そんなデリケートな木から収穫されたコーヒー豆を、私たちは毎日おいしく飲んでいます。 
 いつまでもデリケートな心で人にも接していけたらと思っています。


960号 2019年7月21日

(28)国で変わるコーヒーの飲み方スタイル

 今回は、国で変わるコーヒーの飲み方スタイルを紹介します!!

《フランス》
カフェ・オ・レ。深煎りの豆を使ったコーヒーと、同量の温めたミルクを同時に注ぎ、取っ手のない大きめのカフェボウルを使用します。


《アイルランド》
アイリッシュ・コーヒー。濃いめに淹れたコーヒーにブラウンシュガーとアイリッシュウイスキーをお好みで入れて混ぜ上からホイップした生クリームを乗せます。


《オーストリア》
アインシュベンナー。深煎りコーヒーに砂糖、多めの生クリームを乗せ、その上からチョコを散らしてもいいし、グラスで出す場合もあります。日本ではウインナーコーヒーという名でお馴染みですが、ウイーンではその名称では通じませんので注意しましょう。


《イタリア》
エスプレッソ。デミタスカップでぐいっと飲むのが流儀です。

 国によってさまざまな飲み方があります。みなさんも海外旅行をした気分で、現地でコーヒーを飲んでいるあなたを想像してみませんか!! きっと“至福の一杯”が味わえるかもしれません。飲み方に挑戦してみて下さい。

 

コーヒーの新しい世界を知る3つのトピック

《キャラクター》
産地特有の香味の素晴らしさを実感できるのが、スペシャリテイコーヒーの特徴です。


《トレーサビリティ》
生産や流通の履歴。誰がどこでどのように栽培精製したか、コーヒーが出来上がるまでの背景を指します。


《サステナビリティ》
持続可能性のこと。50年後も100年後も同じようにおいしいコーヒーを作っていくために、作り手にも地球にも優しいコーヒー作りの未来を考えていくことです。


962号 2019年8月18日

(29)おいしいコーヒーと出会う3つの心得

@ なるべく新鮮な豆を買うこと
 焙煎した後は、3〜4日後をピークに、最低2週間頃までが飲みごろで以降は劣化します。焙煎豆を買うなら、できるだけ回転の速い店を選んだ方が好ましいと言えます。
※購入したコーヒーを最後までおいしく飲むためには、味の劣化の原因となる酸素をできるだけ取り除いて保存することが重要です。密閉容器を使う際にも、なるべく小分けにして、取り出す時に酸素に触れるのを防ぎ、光や温度の影響を受けにくい冷暗所に保存します。
 豆は、冷凍保存も可能ですが、コーヒーを淹れる前には、常温に戻してから扱わないと、ふくらみが悪く、上手に淹れることが難しいので、注意が必要です。

A 好みの味を表現できるようになる
 苦み、酸味だけでも好みを伝えられれば自分に合った豆に出会う確率が高くなります。個性の違う2種類のコーヒーを飲み比べ、味の違いを確認してみるのもいいと思います。
 その他にも、甘味、コク、キレなどコーヒーが持つ味わいや香りの中で、自分が一番こだわりたいポイントを押さえて、コーヒーを選ぶことも表現できる近道かもしれません。

B 香ばしさや苦味は焙煎が決める
 香りや苦味の度合いは焙煎によって得られる個性です。深煎り、浅煎りと焙煎の好みに合う豆を探すことが一番だと思います。コーヒーは嗜好品ですから万人にとって最高においしく感じる味は存在しません。焙煎店とのコミニュケーションで、自分の好みを追求してください。


964号 2019年9月15日

(30)ペーパードリップのここがポイント

(1)1投目を注ぎます。1投目は蒸らしの役割。中心から”の”の字を描くように、ゆっくりと一巡します。
(2)表面がしっかり膨らんで来たらOKです。20〜30秒ぐらいして膨らみが落ち着き、平らになるのを待ちます。
(3)2投目を注ぎます。いよいよ抽出本番です。ここでも”の”の字を描くように、中心から外側へ円を描くように注ぎます。
(4)3投目を注ぎます。中心の粉がくぼんだら、3投目のお湯を注ぎます。お湯を注ぐときは、目いっぱい入れようとせず、最大で8分目ぐらいを目安にして下さい。
(5)湯を注いでいると、泡が盛り上がってきます。これは豆が新鮮な証拠です。古いものは陥没してしまうことがあります。
(6)お湯の注ぎ方。お湯がすべて落ちきる前に、次のお湯を注ぐようにしましょう。
(7)4投目以降は抽出量に従い、お湯を注ぎます。全体にかける時間は、3〜4分ぐらいが目安となります。
(8)できあがりです? サーバーの目盛までコーヒーが入ったら、ドリップにお湯が残っていても外してカップに注ぐこと。もったいないと思うなかれ、味が薄まる原因にもなるのです。

 以上がペーパドリップでのコツです。色々と試してみて下さい。うまいコーヒーが出来上がった時には、データーを取っておくと、次から参考になると思います。

 
ひげマスターと珈琲 31〜60     61〜